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汗のお話③ 更年期障害の原因と症状、検査・治療法まで詳しく解説
汗のお話し③(更年期障害)
前回に続いて汗のお話、3回目です。
前回は、汗の悩みで当院に来院される患者さまの中でも
特に多い『甲状腺機能亢進症』についてお話させていただきました。
今回も、汗の悩みで当院に来院される患者さまの中で
最も多い『更年期障害』についてお話させていただきます。
<更年期障害とは>
更年期障害とは、年齢を重ねるごとに卵巣の機能が低下し、
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで
ホルモンのバランスが崩れ、心身にさまざまな不調があらわれることを指します。
閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた10年間を「更年期」といい、
この期間に発症しやすいため、更年期障害と呼ばれています。
平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、
早い人では40歳代前半、遅い人では50歳代後半に閉経を迎えます。
<更年期障害の主な原因>
更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)が、
大きくゆらぎながら低下していくことですが、その上に
- 加齢などの身体的因子
- 性格などの心理的因子
- 職場や家庭における人間関係などの社会的因子
が複合的に関与することで発症すると考えられています。
<更年期障害の主な症状>
更年期障害の症状は大きく3種類に分けられます。
症状①血管の拡張と放熱に関係する症状
- ほてり
- のぼせ
- ホットフラッシュ
- 発汗など
更年期障害の患者様の汗の特徴ですが、
顔に噴き出るような汗が、拭いても拭いても出てくる。
診察中も何度も汗を拭いてられます。
営業のお仕事の方などは、お客さまに説明する時に
汗を拭きながら説明していると信頼感を得られにくい、
せっかく朝にメイクをしっかりしたのに、
汗でぐちゃぐちゃになってしまって悲しいなど訴えるかたが多いですね。
夜中に体の中からカァーッと燃えるように熱くなってきて汗が噴き出て困るという訴えも多いですね。
症状②その他のさまざまな身体症状
- めまい
- 動悸
- 胸が締め付けられるような感じ
- 頭痛
- 肩こり
- 腰や背中の痛み
- 関節の痛み
- 冷え
- しびれ
- 疲れやすいなど
症状③精神症状
- 気分の落ち込み
- 意欲の低下
- イライラ
- 情緒不安定
- 不眠などが主なものです。
<検査>
更年期障害の特徴の一つは症状が様々であることですが、
これらが他の病気による症状ではないことを確認する必要があるため、血液検査を行います。
下記条件が揃った場合、更年期と判断します。
- E2(エストラジオール)値:20pg/ml 以下
- FSH値(卵胞刺激ホルモン)値:40mIU/ml 以上
<治療法>
更年期障害は、先ほど身体的因子・心理的因子・社会的因子が複雑に関与して発症すると話しました。
なので、まず十分な問診を行うことが必要です。
その上で生活習慣の改善や心理療法を試み、それでも改善しない症状に対して薬物療法を行います。
更年期障害の薬物療法は大きく3つに分けられます。
治療法①ホルモン補充療法(HRT)
更年期障害の主な原因がエストロゲンのゆらぎと減少にあるため、少量のエストロゲンを補う治療法(ホルモン補充療法:HRT)です。
更年期障害の症状の中でも特に、HRTは
- ほてり
- のぼせ
- ホットフラッシュ
- 発汗
など血管の拡張と放熱に関係する症状に特に有効です。
劇的に汗が減り喜ばれることが多いです。
子宮のある方と子宮を摘出した方では治療法が異なります。
生理のような出血があっても気にならない方と嫌な方でも治療法が異なります。
HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬など
いくつかのタイプがあり、またその投与法もさまざまです。
患者様とよく話し合いながら、その人に合った最適な治療法を選択していきます。
HRTに関しては、一時乳がんなどの副作用が強調される傾向にありましたが、
最近になって、更年期にHRTを開始した人では、心臓・血管の病気や骨粗鬆症など
老年期に起こる疾患が予防できるという利点が、再び見直され始めています。
治療法②漢方薬
ホルモン補充療法は抵抗があるという方や、多彩な症状を訴える更年期女性に対しては、
「婦人科三大処方」とも呼ばれる
・当帰芍薬散
・加味逍遥散
・桂枝茯苓丸
を中心に、その人に合わせて、他の漢方を組み合わせて処方することが多くあります。
劇的に改善されることも珍しくなく喜んでいただいております。
汗に関しましては、
・加味逍遙散
・柴胡加竜骨牡蛎湯や防已黄耆湯
・補中益気湯
・四逆散
が効果的なことがあります。
治療法③向精神薬
- 気分の落ち込み
- 意欲の低下
- イライラ
- 情緒不安定
- 不眠
などの精神症状が最もつらい症状である場合には、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠導入剤などを処方します。
更年期障害は、しっかり検査・問診を行い、
状況に応じて治療を選定することが重要になりますので、
症状に心当たりがある方は、まずは医療機関を受診してみてください。
次回は、具体的な汗対策についてお話いたします。
では、また次回